起業初心者必見!事業計画と資金計画を連動させて失敗リスクを減らす方法
起業を志す皆様にとって、事業計画と資金計画は、事業を成功に導くための両輪とも言える重要な要素です。しかし、特に初めて起業される方の場合、それぞれを別々に考えてしまい、結果として資金ショートなどの思わぬ壁に直面してしまうことがあります。
この記事では、事業計画と資金計画をなぜ一緒に、そしてどのように連動させて考える必要があるのか、具体的なステップを追って解説します。両者を適切に連携させることで、事業の実現可能性を高め、資金に関する不安を軽減し、成功への確実な一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。
事業計画と資金計画を「連動」させることの重要性
事業計画は、「どのような事業を、どのように展開し、どのような顧客に価値を提供するか」という、事業の方向性を示す羅針盤です。一方、資金計画は、「事業を動かすために、いつ、いくらの資金が必要で、それをどのように調達し、どのように使うか」という、事業の生命線となる資金の流れを管理するものです。
これら二つをバラバラに考えてしまうと、次のようなリスクが生じやすくなります。
- 事業計画が「絵に描いた餅」になるリスク: 素晴らしい事業アイデアや戦略があっても、それを実行するための資金が不足していれば、計画通りに進めることはできません。必要な設備投資ができなかったり、人材を確保できなかったりして、事業の立ち上げや拡大が困難になります。
- 資金計画が非現実的になるリスク: 事業の具体的な進め方や目標(事業計画)が明確でないまま資金計画を立てると、必要な資金の額やタイミングを見誤りやすくなります。「とりあえず多めに借りておこう」といった考えでは、無駄な利息負担が増えたり、それでも足りなくなったりする可能性があります。
- 資金ショートのリスク: 事業計画上の売上予測や費用構造と、実際の資金の出入り(資金繰り)が乖離していると、予測よりも早く手元の資金が底をついてしまう「資金ショート」を引き起こす可能性が高まります。
事業計画と資金計画を密接に連動させることで、事業の実現可能性を資金面から裏付け、必要な資金を過不足なく、適切なタイミングで準備できるようになります。これは、金融機関からの融資を受ける際にも非常に重要視される点です。計画全体の整合性が取れているかどうかが、審査の大きな判断材料となるためです。
事業計画書の基本的な構成要素と資金計画への影響
事業計画書には様々な様式がありますが、一般的に以下の要素が含まれます。これらの要素が、資金計画にどのように影響するかを理解することが、連動の第一歩となります。
- 事業概要・サービス内容: どのような商品・サービスを提供するのか。これが収益の源泉となります。
- ターゲット顧客・市場分析: どのような顧客層に、どのくらいの規模でアプローチするのか。これは売上予測の根拠となります。市場規模や競合状況は、収益の可能性や必要なマーケティング費用に影響します。
- 販売戦略・マーケティング計画: どのように顧客に商品を販売・提供し、認知度を高めるのか。広告宣伝費、営業人件費、販売手数料など、様々な費用が発生します。
- 仕入・製造計画: 商品の仕入れ方法や製造プロセス。原材料費、外注費、製造に関わる人件費など、原価に直接影響します。
- 組織・人員計画: 必要な人員構成や採用計画。人件費(給与、福利厚生費)や採用コストといった固定費に大きく影響します。
- 設備投資計画: 事業を行う上で必要となる店舗、オフィス、機械、ITシステムなどの購入・リース計画。初期費用として多額の資金が必要となるほか、減価償却費や維持費といったランニングコストにも影響します。
- 事業スケジュール: 事業開始までの準備や、開始後の展開スケジュール。いつ、何に資金が必要になるかのタイミングを把握するために重要です。
- 利益計画: 売上から原価や経費を差し引いた利益の予測。事業の収益性を示し、将来の資金繰りや事業拡大のための内部留保に関わります。
これらの事業計画上の「活動」や「目標」一つ一つが、初期費用や日々の運営費、そして得られる収益に結びついていきます。
資金計画の基本的な要素
資金計画は、主に以下の要素で構成されます。
- 初期費用(開業資金): 事業を始めるまでに一度だけ必要となる費用です。店舗の敷金・保証金、内外装工事費、設備購入費、運転資金の準備資金などが含まれます。事業計画の「設備投資計画」や「事業スケジュール」と密接に関わります。
- 運転資金: 事業を始めてから、売上が実際に入金されるまでの間に発生する様々な費用を賄うための資金です。仕入代金、人件費、家賃、光熱費、広告宣伝費、交通費などが含まれます。事業計画の「販売戦略」「仕入・製造計画」「組織・人員計画」といった日々の運営に関わる要素に基づき算出されます。特に、売上が入金されるまでの「サイト」(期間)を考慮することが重要です。
- 資金調達計画: 必要な初期費用と運転資金を、自己資金や他人からの資金(融資、出資など)でどのように賄うかを示す計画です。事業の規模や種類、自己資金の額によって最適な調達方法は異なります。
- 収支計画(損益計算書予測): 一定期間(通常1年間)の売上、費用、利益を予測する計画です。事業計画の売上予測や、初期費用・運転資金の算出根拠となった費用項目に基づいて作成されます。これは事業の収益性を示すものであり、資金の「増減」を示しますが、実際の現金の動きとは異なります。
- 資金繰り表: ある期間(例えば毎月)における現金の「入り」と「出」を記録・予測する表です。収支計画では利益が出ていても、売上入金より先に費用支払いが発生することで、一時的に現金が不足する「資金ショート」のリスクがないかを確認するために非常に重要です。事業計画上の売上入金サイトや費用支払いのタイミングを反映させて作成します。
事業計画と資金計画を連動させる具体的なステップ
ゼロから始める方のために、事業計画と資金計画を連動させて作成する具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:事業計画の主要要素を具体的に検討する
まずは、あなたの事業アイデアを具体的な計画に落とし込みます。特に、以下の点が資金計画に大きく影響するため、可能な限り具体的に検討してください。
- 主力となる商品・サービスと価格設定: これが売上予測の基盤となります。
- ターゲット顧客層と想定される販売量: どれくらいの顧客に、どれくらいの商品・サービスが売れるかの予測です。
- どのように販売するか(店舗、オンライン、訪問など): 販売チャネルによって必要な設備や費用が大きく異なります。
- 商品の仕入方法や製造プロセス: これが原価や仕入代金の支払いタイミングに影響します。
- 事業に必要な場所(店舗、オフィス、自宅など)と規模: 家賃、内外装費、光熱費などに影響します。
- 自分以外に必要な人員と役割: 人件費の算定に必要です。
ステップ2:事業計画に基づき初期費用と運転資金を洗い出す
ステップ1で検討した事業計画の内容をもとに、事業開始までにかかる初期費用と、事業開始後に必要となる運転資金を具体的にリストアップし、それぞれに必要な金額を見積もります。
- 初期費用: 内外装工事費、保証金・敷金、設備購入費(PC、デスク、機械など)、備品購入費、許認可取得費用、当面の運転資金(後述)など。
- 運転資金: 想定される売上が入金されるまでの期間(サイト)を考慮し、その間の家賃、人件費、仕入代金、広告宣伝費、交通費、通信費、水道光熱費などの合計額を計算します。例えば、売上入金が2ヶ月後なら、最低でも2ヶ月分の経費を賄える運転資金が必要になります。通常、3〜6ヶ月分の運転資金を用意することが推奨されます。
ステップ3:洗い出した資金ニーズに対し最適な資金調達方法を検討する
ステップ2で見積もった初期費用と運転資金の合計額が、あなたの事業に必要な資金の総額(資金ニーズ)です。次に、この資金をどのように調達するかを検討します。
- まずは自己資金(貯蓄など)でいくら準備できるかを確認します。
- 不足する金額について、どのような方法で調達するかを検討します。主な調達方法には、日本政策金融公庫や制度融資などの「創業融資」、補助金・助成金、クラウドファンディング、知人・友人からの借入などがあります。
- それぞれの調達方法のメリット・デメリット、審査基準、手続き、調達までにかかる時間などを比較検討し、あなたの事業や状況に合った方法を選びます。例えば、創業融資は返済義務がありますが比較的低金利でまとまった資金を調達しやすい一方、補助金・助成金は返済不要ですが申請が難しく時間がかかる、といった特徴があります。
ステップ4:事業計画の売上・費用予測を基に収支計画・資金繰り表を作成する
事業計画で立てた売上予測や費用構造を基に、具体的な金額を入れて収支計画(損益計算書予測)を作成します。これにより、事業の収益性が見えてきます。
さらに重要なのが資金繰り表の作成です。収支計画の数字を使いつつ、売上入金のタイミングと費用支払いのタイミングを考慮して、月ごとの現金の流れを予測します。
例えば、「売上は今月立ったが、入金は来月末」といった場合、収支計画上は今月売上が計上されても、資金繰り上は来月まで現金が増えません。家賃や人件費などの支払いは現金で発生するため、売上入金までの間に資金が不足しないかを資金繰り表で確認します。
ステップ5:事業計画の目標達成度合いと資金計画の整合性を確認・調整する
作成した収支計画や資金繰り表を見て、事業計画で想定した目標(売上目標など)に対して、資金が足りているか、資金繰りに無理がないかを確認します。
- 資金が不足している場合:事業計画の目標を少し現実的なものに見直すか、追加の資金調達方法を検討する必要があります。
- 資金が潤沢すぎる場合:運転資金の積み増しや、事業拡大のための追加投資を検討できるかもしれません。
- 資金繰りに懸念がある場合:売上入金のサイトを短縮できないか交渉したり、費用支払いのタイミングを調整したり、短期の借入枠を用意したりといった対策を検討します。
このように、事業計画と資金計画の間に乖離がないかを確認し、必要に応じて両方の計画を見直す作業を行います。この調整作業こそが、「連動」の核心部分です。
ステップ6:計画の定期的な見直しと修正を行う
事業を取り巻く環境は常に変化します。計画通りにいかないことも当然あります。事業開始後も、定期的に(例えば毎月)実際の売上や費用、資金の動きを計画と比較し、必要に応じて事業計画や資金計画を見直すことが非常に重要です。
計画は一度作ったら終わりではありません。事業の進捗に合わせて柔軟に修正していくことで、変化に対応し、資金ショートなどのリスクを低減することができます。
連動させる上での注意点と失敗しないためのヒント
- 楽観的な予測は避ける: 特に売上予測は、控えめに見積もる方が現実的です。最悪のケースを想定した資金計画も用意しておくと安心です。
- 費用は漏れなく計上する: 隠れた費用がないか、様々な角度から検討し、可能な限り網羅的に洗い出しましょう。予備費を設けることも有効です。
- 売上入金と費用支払いのタイミングを正確に把握する: これが資金繰り表の精度を左右します。取引条件を事前にしっかり確認しましょう。
- 一人で抱え込まない: 税理士、中小企業診断士、商工会議所、金融機関の担当者など、起業や経営の専門家に相談することも有効です。客観的な視点からアドバイスをもらうことで、計画の精度を高めることができます。
- ツールやテンプレートを活用する: 事業計画書や資金繰り表の作成には、様々なツールやテンプレートが提供されています。これらを活用することで、効率的に作成を進めることができます。(例:日本政策金融公庫の創業計画書フォーマットなど)
まとめ
起業における事業計画と資金計画は、それぞれ独立したものではなく、互いに深く関連し合うものです。特に、初めて起業される方が資金ショートという大きな落とし穴を避けるためには、両者を密接に「連動」させて作成することが極めて重要です。
この記事でご紹介したステップを参考に、まずはあなたの事業アイデアを具体的な形にし、それに必要な資金を洗い出し、資金の調達方法と流れを計画に落とし込んでみてください。そして、両方の計画の数字や内容は整合性が取れているか、資金ショートのリスクはないか、しっかり確認・調整を行ってください。
計画を立てる過程で迷うことや不安を感じることもあるかもしれません。しかし、一つずつ丁寧に取り組むことで、事業の実現可能性は高まり、資金に関する漠然とした不安は具体的な課題として捉えられるようになります。計画は完璧を目指す必要はありません。まずは「叩き台」として作成し、必要に応じて専門家の助けも借りながら、現実的な計画へと磨き上げていきましょう。
事業計画と資金計画をしっかりと連動させることは、あなたの起業を成功へと導くための力強い味方となるはずです。