金融機関が「貸したい」と思う事業計画書の書き方:創業融資獲得のための視点とポイント
起業や独立を目指すにあたり、資金調達は避けて通れない重要なステップです。特に、初めての資金調達として多くの方が検討されるのが「創業融資」です。
創業融資を受けるためには、金融機関に対して説得力のある事業計画書を提出する必要があります。しかし、「事業計画書をどう書けば良いのか分からない」「金融機関はどんなところを見ているのだろうか」と不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、創業融資の申請において、金融機関が事業計画書のどのような点を重視し、「この事業なら資金を提供しても良い」と判断するのか、その視点と書き方のポイントを初心者の方にも分かりやすく解説します。金融機関の考え方を知ることで、より効果的な事業計画書を作成し、資金調達の成功に繋げていきましょう。
なぜ金融機関は事業計画書を重視するのか?
金融機関が融資を決定する際に最も重要視するのは、「融資した資金がきちんと返済されるか」という点です。事業計画書は、その事業に返済能力があるかどうか、将来性が見込めるかどうかを判断するための最も重要な材料となります。
単に「資金が必要だから」というだけでは、金融機関は融資を決定できません。事業計画書を通して、あなたの事業がどのような内容で、どのように収益を上げ、どのように資金を返済していくのかを具体的に示す必要があるのです。つまり、事業計画書は、あなたの事業の「信頼性」と「実現可能性」を金融機関に示すためのプレゼンテーション資料であると言えます。
金融機関がチェックする事業計画書の主要項目
金融機関が事業計画書を審査する際に、特に注目するポイントはいくつかあります。ここでは、主要なチェック項目をいくつかご紹介します。
1. 経営者の資質と経験
- チェックされる点: あなた自身の経験、知識、スキル、そして事業にかける熱意や誠実さです。過去の職務経験がこれから始める事業にどう活かせるか、困難に直面した際にどのように乗り越える覚悟があるかなどが見られます。
- 書き方のポイント:
- これまでのキャリアで培った経験やスキルを具体的に記述しましょう。特に、これから行う事業に関連する経験があれば、詳しく説明することが重要です。
- なぜこの事業を始めたいのか、どのような社会課題を解決したいのかなど、事業にかける想いや熱意を正直に伝えましょう。
- 自己資金の準備状況なども、計画性や本気度を示す指標となります。自己資金の形成過程を説明できると、さらに良い印象を与えられます。
2. 事業の実現可能性と市場性
- チェックされる点: あなたの事業が市場で本当に成立するのか、競合と比べてどのような強みがあるのか、顧客は存在するのかなど、事業自体のポテンシャルと現実性が見られます。
- 書き方のポイント:
- ターゲットとする顧客層、提供する商品やサービスの具体的な内容を明確にしましょう。
- 市場規模や成長性、競合の状況について、具体的なデータや調査結果に基づいて説明しましょう。
- あなたの事業の独自の強み(強み、差別化ポイント)は何ですか? なぜ顧客は競合ではなくあなたのサービスを選ぶのか、説得力を持って伝えましょう。
3. 収益性と返済能力
- チェックされる点: 事業が計画通りに進んだ場合に、どのくらいの売上が見込めるのか、どれくらいの費用がかかるのか、そして利益が出て、融資の返済を続けることができるのかという、事業の経済的な側面が最も厳しくチェックされます。
- 書き方のポイント:
- 売上予測、原価、経費などを具体的に計算し、その根拠を明確に示しましょう。「なぜその売上予測なのか」を具体的に説明できないと、計画の信頼性が低くなります。市場調査の結果、これまでの実績、テスト販売の結果などを根拠として提示できると良いでしょう。
- 資金繰り計画(資金がいつ、どれだけ入ってきて、どれだけ出ていくか)を作成し、資金ショートの心配がないことを示しましょう。
- 融資の返済計画を具体的に立て、無理のない返済が可能であることを示しましょう。
4. 資金使途の妥当性
- チェックされる点: 融資を受けたい金額が、何のために必要なのか、その使い道は妥当なのか、そしてその資金が事業の成功にどのように繋がるのかが見られます。
- 書き方のポイント:
- 必要な資金の総額、そして設備資金、運転資金など、資金の具体的な使い道を項目ごとに明確に分け、それぞれにいくら必要なのかを具体的に記述しましょう。
- なぜその資金が必要なのか、その資金を使うことで事業がどのように成長するのか、収益性はどう向上するのかなど、資金使途と事業の成長を結びつけて説明しましょう。見積書などを添付すると、さらに信頼性が高まります。
事業計画書作成以外の重要なポイント
事業計画書を丁寧に作成することはもちろん重要ですが、それだけで融資が決定するわけではありません。金融機関との面談も非常に重要な機会です。
面談では、事業計画書に書かれた内容について、より詳しく説明したり、担当者からの質問に答えたりすることになります。ここで重要なのは、事業計画書の内容を深く理解していること、そして事業への強い熱意や誠実な姿勢を示すことです。質問に対して曖昧な返答をせず、具体的かつ論理的に説明できるように準備しておきましょう。
また、普段からの金融機関との付き合い方も影響する場合があります。起業前から金融機関に相談に行くなど、関係性を構築しておくことも有効な場合があります。
まとめ:金融機関の視点を理解し、説得力ある計画を
初めての創業融資に挑戦する際、事業計画書はあなたの事業の羅針盤であると同時に、金融機関への最も重要なアピールツールとなります。金融機関が「貸したい」と思う事業計画書とは、単に見栄えが良いものではなく、「この経営者なら任せられる」「この事業なら成功する可能性がある」「きちんと返済できる」という信頼性と実現可能性を、具体的な根拠を持って論理的に示せるものです。
この記事でご紹介した金融機関のチェックポイントを参考に、あなたの事業の魅力と可能性、そして返済能力を分かりやすく、説得力を持って伝える事業計画書を作成してください。作成に行き詰まった場合は、税理士や中小企業診断士などの専門家、あるいは商工会議所や自治体の窓口に相談することも検討してみましょう。
事業計画書の作成は、事業内容をより深く掘り下げ、具体化するための貴重な機会でもあります。金融機関の視点を取り入れながら、あなたの事業の成功に向けた計画をしっかりと立てていきましょう。