初めての創業融資面談:担当者が知りたいこと、準備すべき回答
起業・独立を目指す上で、資金調達は避けて通れない重要なステップです。中でも、多くの起業家が検討するのが金融機関からの創業融資でしょう。事業計画書や創業計画書を提出し、書類審査を通過すると、次に待っているのが金融機関の担当者との面談です。
初めての創業融資面談は、誰でも不安を感じるものです。担当者はどのようなことを聞きたいのか、どのように準備すれば良いのか、具体的なイメージが湧かず、さらに不安が増す方もいらっしゃるかもしれません。しかし、面談は単なる審査の一環ではなく、あなたの事業への熱意や計画の具体性を担当者に直接伝えることができる貴重な機会です。
この記事では、創業融資面談で金融機関の担当者が何を知りたいのか、よく聞かれる質問とその意図、そして面談に自信を持って臨むための具体的な準備方法を分かりやすく解説します。この記事をお読みいただくことで、面談に対する不安を軽減し、成功へと一歩近づくことができるでしょう。
創業融資面談の目的と担当者が知りたいこと
金融機関が創業融資面談を実施する主な目的は、提出された書類だけでは判断できない、以下の点を確認することにあります。
- 起業家自身の人物像: あなたの経験、スキル、そして事業にかける熱意や覚悟。
- 事業内容の理解度: あなた自身が、提供する商品・サービス、市場、顧客、競合について深く理解しているか。
- 事業計画の実現可能性: 売上や費用、利益の予測に根拠があり、計画通りに進めることができる具体的な方法を持っているか。
- 返済能力: 事業で生み出す利益で、計画通りに融資を返済できる見込みがあるか。
- 資金の使い道: 融資された資金を何に、いくら使うのかが明確で、事業の成功に不可欠なものか。
担当者は、これらの点を通じて、あなたの事業が成功し、融資が滞りなく返済される可能性が高いかを総合的に判断しようとしています。面談は、書類では伝えきれないあなたの熱意や人間性を伝える場と捉えましょう。
面談でよく聞かれる質問とその意図
ここでは、創業融資の面談でよく聞かれる質問とその背景にある意図を解説します。事前にこれらの質問への回答を準備しておくことが、面談成功の鍵となります。
1. 自己紹介・これまでのキャリアについて
- 質問例:
- 「これまでのご経歴について教えていただけますか?」
- 「なぜこの事業を始めようと思ったのですか?」
- 「現在の会社を辞めて起業することへの不安はありますか?」
- 意図: あなたの経験がこれから始める事業にどう活かせるのか、起業への動機は何か、そして起業に対する覚悟や熱意を知りたいと考えています。過去の経験とこれから行う事業との関連性を明確に説明できるように準備しましょう。
2. 事業内容・市場について
- 質問例:
- 「具体的にどのような事業内容ですか?」
- 「あなたのサービス・商品は、既存のものと比べて何が違いますか? 強みは何ですか?」
- 「どのような顧客をターゲットにしていますか?」
- 「競合はいますか? どのように差別化しますか?」
- 「市場規模や将来性についてどのように考えていますか?」
- 意図: あなたが事業を取り巻く環境をどれだけ分析し、自身の事業の立ち位置や優位性を理解しているかを確認します。自身の言葉で事業内容を簡潔かつ魅力的に説明できるよう、何度も練習しましょう。
3. 事業計画・売上・費用について
- 質問例:
- 「売上計画の根拠は何ですか?」
- 「想定される費用にはどのようなものがありますか? なぜその金額なのですか?」
- 「損益分岐点はどのくらいですか?」
- 「資金繰りについてどのように考えていますか?」
- 意図: 事業計画書に記載された数値が、現実的な根拠に基づいているかを確認します。特に売上予測については、「なぜその売上を達成できるのか」を具体的に説明できるように、集客方法や客単価、回転率などの具体的な数値を準備しておきましょう。
4. 資金計画・自己資金について
- 質問例:
- 「今回申し込まれた融資額は、何にどのように使いますか?」
- 「自己資金はいくら準備しましたか? そのお金はどのように貯めましたか?」
- 「自己資金以外に、生活費などはどのように賄う予定ですか?」
- 意図: 資金の使い道が事業の成功に不可欠なものか、そして自己資金をどれだけ準備してきたか(事業への本気度と計画性を示す指標となります)を確認します。通帳などを求められる場合もありますので、準備しておきましょう。
5. リスクと対策について
- 質問例:
- 「事業を行う上で、どのようなリスクが考えられますか?」
- 「そのリスクに対して、どのような対策を考えていますか?」
- 意図: 事業には必ずリスクが伴います。リスクを認識しているか、そしてそれに対して事前にどのような対応策を考えているかを確認することで、あなたの危機管理能力や問題解決能力を判断します。想定されるリスクを正直に伝え、それに対する具体的な対策を説明しましょう。
面談対策:具体的な準備方法
面談に自信を持って臨むためには、事前の準備が不可欠です。以下のステップで準備を進めましょう。
ステップ1:事業計画書・創業計画書を徹底的に読み込む
提出した書類の内容を自分の言葉で説明できるようにすることが最も重要です。特に、売上・費用計画の根拠、資金の使い道、返済計画など、数値に関する部分は深く理解しておきましょう。
ステップ2:想定される質問への回答を整理・準備する
前述の「よく聞かれる質問」を参考に、あなた自身の言葉で回答を準備します。単に答えるだけでなく、その背景にある考え方や具体的なエピソードを交えると、より説得力が増します。特に、自己資金の準備方法や、事業への熱意については具体的に話せるようにしておきましょう。
ステップ3:具体的な数値を準備する
売上や費用の根拠となる具体的な数値データ(例:客単価、想定来店数、仕入先情報、見積もりなど)を手元に準備しておくと、担当者の質問にスムーズに、かつ具体的に答えることができます。
ステップ4:自己資金の証明となる通帳を準備する
自己資金の出所や形成過程は、金融機関が重視するポイントの一つです。数ヶ月〜1年程度の通帳の履歴を確認されることがありますので、事前に記帳しておくなど準備しておきましょう。
ステップ5:逆質問を考えておく
面談の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれることがほとんどです。いくつか質問を準備しておくことで、あなたの真剣さや事業への関心を示すことができます。(例:「融資実行までの大まかなスケジュールを教えていただけますか?」「融資後の相談に乗っていただくことは可能ですか?」など)
ステップ6:模擬面談を行う(可能であれば)
友人や知人、または専門家(税理士や中小企業診断士など)に協力してもらい、模擬面談を行ってみましょう。本番に近い状況で練習することで、話し方や説明の仕方を改善できますし、想定外の質問への対応力も高まります。
面談当日:落ち着いて臨むための心構え
- 時間厳守: 遅刻は厳禁です。約束の時間の少し前に到着するようにしましょう。
- 身だしなみ: 清潔感のある服装を心がけましょう。スーツである必要はありませんが、相手に失礼のない服装を選びます。
- 誠実さ: 分からないことや不確かなことは、正直に「現時点では〇〇と考えていますが、今後さらに検討が必要です」などと誠実に伝えましょう。嘘やごまかしは信頼を損ねます。
- 熱意を伝える: あなたがどれだけその事業に懸けているのか、言葉や態度で伝えましょう。熱意は、担当者が融資を検討する上で重要な要素の一つです。
- 落ち着いて話す: 緊張するかもしれませんが、深呼吸をして落ち着いて話しましょう。担当者はあなたの事業を理解しようとしてくれています。会話のキャッチボールを意識してください。
まとめ
創業融資面談は、あなたがこれまで練り上げてきた事業計画や、事業にかける想いを金融機関に直接伝えられる重要な機会です。事前にしっかりと準備を行い、担当者が知りたいポイントや質問の意図を理解しておけば、必要以上に恐れることはありません。
提出した事業計画書・創業計画書を深く理解し、想定される質問への回答を具体的に準備し、誠実かつ熱意を持って臨むことが、面談成功への道を開きます。この記事でご紹介した準備方法を参考に、自信を持って面談に挑んでください。面談を突破し、必要な資金を調達できることを願っています。
この記事を参考に、あなたの起業・独立に向けた資金調達を成功させていただれば幸いです。